工法紹介

リングネット落石防護柵

概要

リングネット落石防護柵は美しい山岳国のスイス連邦で開発された技術で、戦時中、海の中で魚雷を止めるために使用されていたリング構造のネットを応用したものです。

スイス連邦では、国家的な取り組みとして、スイス連邦・森林・環境・景観研究所(WSL)とGEOBRUGG社が共同で、数多くの実物実験と解析により開発を行ったものです。それと共に、実物実験による技術の認証(BAFU)を行う基準が整備され、これに適合することを前提に開発がすすめられ、近年ではEOTA基準に適合するようになりました。

一方、日本では平成8年の豊浜トンネル事故を受け、岩盤崩落や落石対策に対する安全を求める機運が高まりました。また、道路だけではなく、鉄道・砂防分野等でも効率的な落石対策が求められるようになりました。そこで、(公財)鉄道総合技術研究所と東亜グラウト工業(株)の共同研究により、さらなる実験を通して性能検証を行ったうえで国内に導入し、平成9年に最初のリングネット落石防護柵(RXタイプ)の施工に至りました。

20年以上経過したそれらの防護柵も一部補修等を加えながら、健全性を保っています。

設計想定以上の落石捕捉
落石群の捕捉
JR小海線での導入
JR小海線現況(2020年)

その後、国内で多くの施工実績を積み(工事発注件数は1,000件超)、落石等の捕捉による効果の発揮から高い信頼性と経済性が認められてきています。
近年では新タイプの形式(RXEタイプ)が加わり、より多様なニーズにも対応できるようになりました。 平成29年には国内の道路分野の基準である「落石対策便覧(日本道路協会)」が改訂されましたが、それに適合できる性能を有しています。

特徴

構造

落石の捕捉面は高強度硬鋼線をリング状に編んだリングネットを用いることで、鋼材の大きな利点である引張に強い特性を活かしていることが、最大の特徴です。
単体のリングは隣り合うリングと知恵の輪のように接続されているので、接続点が弱点になりにくい構造です。

リングネットを支持するワイヤロープには緩衝装置を接続し、伝搬する荷重を軽減します。
ワイヤロープは支柱に保持され、最終的な荷重に抵抗するアンカーに伝達される構造となっています。
ワイヤロープ・支柱とアンカーの接続点は、ヒンジ構造となっており、アンカー頭部の曲げの力を最小限にできるよう工夫しています。

落石衝突時のエネルギー吸収の仕組み

  1. 落石衝突により、リングネットが弾・塑性変形すると共に、応力の分散が面的に広がることで、効率的にエネルギーを吸収します。
  2. リングネットとワイヤロープはシャックルで接続され、接続点がカーテンのようにスライドすることで落石衝突箇所方向にスライドし、リングネット自体の抵抗力が向上します(カーテン効果)。
  3. ワイヤロープに伝わる荷重は、接続されている緩衝装置の作動により、伝搬する荷重が減少します。
  4. 支柱基礎部のアンカー(支柱基礎反力体)およびワイヤロープに接続されたアンカー(ワイヤロープアンカー) に荷重が伝搬し、捕捉面に作用した落石の衝撃荷重は最終的に地山部の抵抗とつり合うことで、衝撃を受け止めます。  落石衝突による柵挙動の多くは、ほんの一瞬(1秒内外)で、各部材に作用する荷重の大きさと方向は一瞬で変化し、部材の変形も様々で計算だけでは推定が困難なため、実物大実験にて構造を決定しています。

維持管理性

大きな変形を許容することで落石のエネルギーを吸収する構造であるため、大きく変形する交換対象部材を限定するよう工夫しており、捕捉面のリングが1リングずつ交換できること、緩衝装置は単体もしくは接続するワイヤロープ単位で交換できる仕組みとなっています。

施工性

最も大きな施工機械はアンカー設置用のボーリングマシン(最小500㎏程度)でボーリング用の足場設置と機械の搬入ができる場所であれば、施工が可能です。 急峻な斜面での施工状況を事例として紹介します。

適用範囲

リングネット落石防護柵にはRXタイプとRXEタイプの2種類があり、それぞれ特徴を持ち合わせているため、現場のニーズに応じて選定が可能です。
その両タイプは建設技術審査証明を取得しており、下記の特徴があります。

説明動画

RXタイプ 重錘鉛直落下実験

RXEタイプ 重錘鉛直落下実験

RXEタイプ 重錘水平衝突実験